北海道札幌市西区の工業団地にある石田製本株式会社さんは、1936年に創業した歴史ある会社です。初代・石田英二(いしだ えいじ)さんの自宅の一角に構えた作業場からスタートし、帳簿の製本をメインに行っておりました。当時は手づくりであることに頑なにこだわり、一冊一冊丁寧に仕上げていたと二代目の誠(まこと)さんは言います。その志を踏襲しつつも、時代に遅れることなく量産化に舵切りをし、本をこよなく愛する人の思いを何よりも大切にしてきました。そして、三代目の雅巳(まさみ)さんは手づくりの温もりを大切にしつつ、書く人・作る人の「思い」を伝える本作りに努め、オリジナルの絵本や記念アルバム・自社ブランドなどの新規事業を開拓しています。
今回は、営業部長・吉田幸宏(よしだ ゆきひろ)さんにお話を聞くことができました。
「まごころをこめた本づくり」をモットーに、1936年の創業から長きにわたって帳簿や本、雑誌などを作ってきましたが、2010年頃からはデジタル化によって”紙離れ”が進んでいます。製本会社は印刷会社から依頼を受け、本という形にするのが基本的なお仕事。その頃から『形にする』だけではなく『生み出す』という事に挑戦しています。
最初に始めたのが幼稚園・保育園の卒園アルバムの制作。次に絵本作家輩出プロジェクトとして、プロ・アマ問わず一冊から低価格で絵本の自費出版ができるサービスの提供を始めました。これまでの製本の技術を応用して制作しているので、クオリティには自信がありました。今ではどちらのサービスも順調で、新しい顧客も増え続けています。
そして、2020年3月。満を持して自社文具ブランド「booco(ボッコ)」を立ち上げます。ブランド名は「ぼっこ手袋」からきており、北海道ではミトン型の手袋のことをこう呼びます。お母さんが手編みでつくってくれた「ぼっこ手袋」の温かみを持ち続けられるようにと名付けられました。
製本会社ですから書店へ足を運ぶ機会は多く、その度に文具コーナーをチェックしていました。その中でペンは沢山の色や種類があるのに、ノートは形や表紙のデザインの種類は多いけれども紙は白が多い事に気付きます。そこで、白じゃなくてもいいのでは?本の作り方と似ているのでは?石田製本ならもっと良いもの作れるのでは?と考えるようになり開発をスタート。
文具は年々販売スペースが広くなり、新しいものが発売されていますので「店頭に並んだら目立つものにしよう!」とコンセプトを決め、色や装丁を重視したカラフルな色に北海道らしい食材をデザインしました。文具の固定概念がないからこそ生まれたアイディア。中の紙も表紙と同系の4色を使用してグラデーションをつくっています。そして東京ギフトショーに出品したところ、多くの有名販売店のバイヤーさんからお声がけが。そこでいただいたアドバイスや要望を工場に持ち帰りすぐに改良。自社工場を持っているからすぐに修正できるスピード感が長所と吉田さんは言います。
製本工場の様子
製本は沢山の工程があります。最初は断裁です。印刷会社から納入された刷本の余白を切り落とし、折機で【折丁(おりちょう)】という小さい冊子を作ります。折丁を1折から順に重ね、一本の糸で縫い合わせていきます。平安時代から伝わる方法で、全ての折丁の背の部分に糸がかかっているので耐久性が高く頑丈な本になります。そして表紙を接着剤で圧着し完成です。
吉田さんは石田製本で作った本の大半は分かると仰っていました。折丁や糸のかかり方、表紙の接着の仕方など人の目に触れない内部にまでこだわって丁寧に作っているからです。吉田さんは本当に嬉しそうに、楽しそうに工場案内と製本の方法を説明していて誇りを持ってお仕事をなさっているのだなと感じました。
『温故知新』長年培い築いてきた伝統や技術を大切にし、なおかつ新たな価値を吹きみ新製品・サービスを生み出し続ける石田製本さん。ぜひ一度商品をお手にとって確かめてみてください。