北海道を代表する工業都市として知られる室蘭市。工場夜景でも有名なこの街に本社・工場を構える三好製作所さんは、昭和24年の創業以来、一貫してプラスチック部品の金型製作、成形、加工から製品組立までを手掛けている企業です。長年培ってきた「ものづくり」の原点を継承し、現在に至るまで様々な技術革新に対応。生産体制・品質管理体制の構築を進め、「より安く」「より高品質」をモットーに、時代の先端ニーズに応えられる提案型メーカーへと変化しています。
今回は代表取締役社長の川村佳敬(かわむら よしひろ)さんにお話と工場案内をしていただくことができました。
本社と室蘭工場は北海道の工業発展を支えてきた海陸交通の要衝である室蘭港に面しており、目の前には海が広がります。東日本最大のつり橋で、夜間はライトアップとイルミネーションで美しい夜景を楽しめる「白鳥大橋」には車で3分の距離にあります。
室蘭工場では工業用プラスチック製品の成形や、学校給食や病院で使用されるメラミン食器の製造と販売をしています。日本製の原料を使用し、長年培ってきた知識と技術で国や自治体が定める規格や基準はもちろん、独自の社内基準をクリアした安心・安全な商品です。
平成17年からは北海道大学発のベンチャー企業と、保冷剤とお弁当箱が一体になった「GEL-COOL」の開発を始めます。ベンチャー企業との出会いは、三好さんがお仕事で札幌へ行った際、たまたま隣の会場で行われていた発表会でした。約束の時間まで少し余裕があったので立ち寄ると、保冷剤とお弁当箱の蓋が一体になったお弁当箱が紹介されていました。発想はとても良いが商品化するにあたっては課題があるなと感じたこと、三好製作所の培ってきた技術で実現できそうと感じたため発表者に声をかけ、彼らのアイデアを一緒に実現する事に。翌年には札幌円山動物園のオフィシャルグッズとしても採用されている、白くまがデザインされた「GEL-COOま」の販売を開始しました。
社長室にはGEL-COOLが受賞したグッドデザイン賞などの賞状や、特許を取得した際の賞状がずらりと飾られていました。
「GEL-COOL」のランチボックスを開発したのがきっかけで、お弁当箱や水筒の展開をしています。ペットボトルがフィットする様に蓋を凹ませたお弁当箱や、環境保護の観点から汚れの落ちやすい素材を使用したり北海道産の帆立の貝殻を混ぜることでプラスチックの使用量を少なくする取り組みもしています。
工場の様子
工場の中には大きな機械はもちろん、たくさんの種類のプラスチックの原料が袋に入って保管されていました。製品の用途によって強度や必要な要素が違うので使い分けています。この様な細かいビーズ状になっています。
こちらの機械でビーズ状のプラスチックの原料を溶かし、金型へ流し込んでいきます。温度調節などはタッチパネル式になっていました。
三好さんが触っているドリルのようなものは、機械の中で回りながら先端から溶かしたプラスチックを金型へ流し込んでいます。そうすることでムラなく注入することができます。
そして冷やされたものがベルトコンベアに乗って出てきます。これはGEL-COOLの蓋が成形されて流れてきたところです。
蓋などにプリントする機械もあります。このように原料の加工から製品まで完成させることができる設備が揃っています。様々な要望に応じられることで、会社のノベルティや学校の記念品等の製作依頼もたくさんあるそうです。他社では取り扱えないような少量の発注にも、出来る限り対応していきたいと教えてくださいました。
完成した商品は、キズや欠け、シワなどがないか全ての商品を人の目でチェックします。キズ有りで不良品となった物を見せていただきましたが、私が見てもどこにキズがあるのか、教えてもらわなければ分からないほどの小さなキズでした。川村さんはこれこそが『ものづくりの真骨頂』と仰っていました。質の良い原料を使い、高い技術があっても、最後の最後は人の目でチェックする。メイド・イン・ジャパンが信頼される理由はここにあると。
「ものづくり」に対する想い
最後に川村さんに「ものづくり」に対する想いをお聞きしました。『戦後の日本の復興と経済発展を支えてきたのは、資源の無い日本が豊かな国になれたのは、”ものづくりの技術”があったから。』と川村さんは言います。メイド・イン・ジャパンはその品質と性能、信頼を獲得してきました。真面目で几帳面とされる日本人の作る商品は、これからも変わらず求められていくでしょう。三好製作所はこれからも誠実に向き合っていきます。