北海道「むかわ町」は、2006年3月に穂別町・鵡川町が合併し「むかわ町」となりました。北海道の道央圏の南方に位置し、海・山・川と多彩な自然環境に恵まれています。東西及び北部の三方が日高山脈に囲まれ、南部は太平洋に面しており、全国でも屈指の清流度を誇る一級河川「鵡川(むかわ)」が南北に縦走しています。
北上しいたけ園さんは旧穂別町に位置し、むかわ町の中でも内陸側のほとんど山の中にあります。周辺の気候は、真冬には-25度を下回ることも少なくなく、平均最低気温は-16.0度と非常に寒さが厳しいのが特徴です。訪問した9月中旬でも辺りはひんやりとしており、新鮮な澄んだ空気を感じられました。
そんなむかわ町で【北上しいたけ園】さんは『安全安心それでいて美味しい』をモットーに原木椎茸を栽培しています。創業者である北上友直さんの代は露地で全ての椎茸を栽培していましたが、2代目の孝俊さんの時に当時の北海道では珍しいハウス栽培に乗り出しました。そして試行錯誤の上に「サイクルハウス」という栽培方法を確立し、原木栽培でも比較的安定して年中生産が可能となりました。
現在では3代目の北上広人さんが代表として原木椎茸のハウス栽培をしています。「美味しいね」「また来るね」と笑顔で言ってくださるお客様の声が原動力になっているとおっしゃっていました。本来自然のキノコは木から出てきます。それに近い方法である原木栽培で収穫された北上しいたけ園さんの椎茸は、風味豊かで歯ごたえが良く、甘みを感じられましたよ。
園内の様子。椎茸が栽培されているハウスへ向かう途中には、写真右のように木がずらりと並んでいます。
椎茸の栽培方法には大きく分けて菌床栽培と原木栽培の2種類があります。現在は約9割が菌床栽培と言われており、スーパーなどで売られているのほとんどは菌床栽培です。菌床栽培はおがくずなどを固めて栄養剤を加えたものに菌を植え付けて栽培します。一方、原木栽培は古来より行われている栽培方法で木に種菌を打ち込み栽培します。北上しいたけ園さんでは、樹齢20~30年の北海道産ナラの木を秋から冬に伐採し長さ90cmに切り出してから種菌を打ち込んでいます。
こちらはハウスの中の様子。両脇には格子状に積み上げられた原木が並んでいます。
農薬を使用していないので害虫と雑菌がつきやすくなります。予防することが一番重要で、害虫や有害菌の温床となる可能性のある物をハウス内から除去しなければなりません。これには大変な労力と根気、愛情と情熱が必要ですが、原木栽培にしかない香りや歯ごたえ、旨みをたくさんの人に知ってもらい笑顔になって欲しいという一心で無農薬の原木栽培にこだわっています。
ハウスの入り口付近には暖房がありました。椎茸は暑さと寒さに弱いため、ハウスの温度を20度前後で保つために設置されています。そして、屋根の部分と入り口で光の入り方は違うのがおわかりいただけますでしょうか?ハウス内の温度を上げないように日光を遮断する特殊なシートでハウスを覆っています。日光を浴びすぎてしまうと原木の中の温度が上がり過ぎてしまい、しいたけ菌が死んでしまうのも防いでくれています。また、ハウスの天井にはスプリンクラーが設置してあり水分管理も徹底されています。
温度管理や水分管理を徹底する事で安定して美味しい椎茸が収穫することが出来るのです。
格子状に積み上げられた原木を覗き込むと、ニョキニョキと椎茸が生えています。大きさは様々ですが、人間と同じくそれも個性なので収穫する際は「かさ」が広がっているのかどうかで食べ頃を判断しています。
椎茸はお料理の脇役として使われることが多い食材ですが、タンパク質やアミノ酸、ミネラル、ビタミン、亜鉛、食物繊維が豊富です。そのうち旨味成分でもあるアミノ酸は特に原木椎茸に多く含まれていますので積極的に食べたい食材です。
北上しいたけ園さんでは栽培だけではなく、「椎茸狩り」の体験も行っています。予約が必要ですが、入園料・時間制限なしなので心ゆくまで楽しむことができます。専用の収穫カゴは満タンに採って約1kg入る大きさで、100g162円でお持ち帰りすることができます。他には1000円で専用の袋に詰め放題というオプションもありました。
今回は「1000円で専用の袋に詰め放題」で椎茸狩りを体験させていただきました。指で軸をつまんで優しく揺らすとぽろっと簡単に収穫できました!自分で選んで収穫したのでより食べるのが楽しみになりました!
椎茸狩りの後はBBQも楽しめます。こちらも予約が必要です。お一人1500円で豚肉ロース、ウインナー、玉ねぎ、ピーマン、ホイル焼き用ジャガイモ1個、北上しいたけ園さんの原木椎茸食べ放題が付いてきます。火おこしや調味料も用意していただけるので手ぶらで大丈夫!新鮮なお野菜と、小坂農園さんの麹と吉村燻製工房さんの塩を使った塩麹など、地元むかわ町の幸を味わうことができます。そして、1日1グループのみの受け入れなのでプライベートな時間を過ごすことができます。
なんと言っても原木椎茸が食べ放題なのは贅沢ですよね。バターで焼いたり、お醤油を垂らしたり、塩麹で食べても相性抜群で、プリプリな歯触りとぎゅっと詰まった美味しさで何個でも食べられちゃいました。北上さんオススメの食べ方は、「火であぶりかさの表面から水滴が出てきたら塩を降りかける」だそうで、素材本来の味を楽しめました!
普段食べるのはかさの部分のみという方も多いと思いますが、実は軸の方が栄養があり、香りも風味も強いです。しっかり火を通すと固さも気にならずに食べることができるのでぜひ試してみてください。
北上しいたけ園さんのこだわりの栽培方法で採れた椎茸は、肉厚で歯ごたえと濃厚な風味と旨みが凝縮されていて本当に美味しかったです。もぎたてがお手元に届きますので是非その違いを楽しんでみてください。