四代目中澤農園さんは北海道むかわ町穂別にて明治時代から続く農家です。全国的に生産量の少ない長芋の一種である”だるまいも”や北海道では栽培が難しいとされる”唐辛子”、”Mr.浅野のけっさく”という品種のトマトをはじめとして、アスパラやメロン、スイカ、かぼちゃなどを生産しています。
蕎麦のつなぎ粉に”だるまいも”を使用した「だるまそば」は、一流シェフやカリスマバイヤーなど食分野の第一人者たちに選定された『北のハイグレード食品』に認定されています。また、唐辛子は『辛いラーメン14』という札幌の辛いラーメン専門店で使用されているなど、味は折り紙付きなんです。そんな四代目中澤農園さんの農園で畑の様子や収穫の様子、農業に対するこだわり・想いを取材してきました。
だるまいもの栽培
むかわ町は、北海道の道央圏の南方に位置し、海・山・川と多彩な自然に恵まれていて、東西及び北部の三方が日高山脈に囲まれ、南部は太平洋に面しており、全国でも屈指の清流度を誇る一級河川「鵡川(むかわ)」が南北に縦走しています。その中でも穂別地区は日高山脈の麓にあり、畑は山々に囲まれた盆地地形。寒暖差が大きいのが気候の特徴で、北海道で一番気温の高い日や低い日になることもしばしば。
この寒暖差が糖度が高くて美味しい作物を作るには重要なポイントで、中澤農園さんもこの恩恵を受けているので美味しくできると四代目和晴さんは言います。
春に直径1センチほどの大きさの球芽「むかご」を植えます。そして秋に収穫したものが「種芋」になります。このままではまだ出荷できませんので、翌春に今度は種芋を植えて秋に収穫したものが「だるまいも」です。2年越しでようやくお届けすることができるんです。
夏には青々と葉を生い茂らせます。種芋から伸びたツタがは鉄骨に張ったネットに絡みながら成長し、緑のカーテンをつくります。この鉄骨を用意してあげることで上に延びることができ、一枚一枚の葉が太陽に当てるので光合成がしやすくなりしっかり成長することができます。秋になると青かった葉も紅葉し、葉の栄養が根に降りたことを教えてくれます。しっかりと色付くまで待つことにより、美味しいだるまいもになります。
ぴょこぴょこっと土から頭を出しているのが、だるまいものツタの部分。しっかり紅葉した後は、収穫しやすいよう鉄骨とネットを外しツタを刈り取ります。一つのツタにつき、一本のだるまいもが実っています。
だるまいもの収穫
取材に行った11月上旬、畑の周りにはうっすらと雪が積もっていて冷え込んでいました。そんな中、朝7時からだるまいもの収穫をされていました。お昼休憩を挟み、日が暮れるまで作業は続きます。
先代、親戚、研修生で掘り起こした土から手作業でだるまいもを取り出します。そしてサイズ別でコンテナに振り分ける作業も同時に進めていきます。「だるまいも掘りは、チームプレー。」と奥様のさとみさんは仰っていました。
掘り起こされた土は、約70cmの深さ。実際に足を踏み入れると、新雪の上を歩いているようなフワフワとした感覚がありました。中澤農園さんは自然環境に恵まれているだけではなく、土作りにも力を入れていて、北海道産の有機肥料を使うことにこだわっています。オホーツク海で獲れた魚介の残渣(ざんさ)の肥料を中心に、帆立の貝殻、米ぬか、北海道の山から採掘されるミネラル肥料を使うことでアミノ酸やミネラルが豊富な土壌を作っています。
恵まれた環境、豊かな土壌で自分たちが食べて美味しいと思えるものだけを作っています。農園から直送することで購入者さんのお手元までスピーディーにお届けすることができるため、流通に適した品種に縛られずに美味しいと思える品種の栽培が可能なのです。
四代目中澤農園の未来
ここまで地域のことや農法、栽培している野菜のこだわりをお聞きしましたが、四代目として農園を継承したのは平成30年のはじめ。明治時代から代々続く農家さんとはいえまだまだ勉強で試行錯誤しながらの毎日だそうです。さとみさんは、前職はウエディングプランナーで結婚を機に農家へ。ご夫婦と、農家である従兄弟や親戚と力を合わせ「あなたの農家になる」というスローガンのもと、受け継がれている田畑を穂別の自然と共により発展させることに尽力しています。
和晴さんは平成30年に起こった北海道胆振東部地震で被災した当時農協青年部の部長を務めており、農業者が前を向きこれからも農業を行なっていくための精神的、スキルアップのための支援活動を行なっています。また、むかわ町内の農家や漁師らで地元食材を使った「むかわ餃子サーカス」を商品化し町の盛り上げ役として一役買っています。
こちらは四代目中澤農園さんから届く段ボール。右下のデザインは、自然が好き、食べることが好き、農業に興味がある、誰もが気軽に遊びに来れるコミュニティーを作れる農園でありたいという願いを込めて作られています。フェスのように賑わう農園になることでむかわ町にも貢献したいと話してくださいました。
そして、今は「おがくず」と一緒にだるまいもを発送していますが、おがくずを「土」に見立ててご自宅で収穫体験ができるように改良したり、種を植えて育て、収穫しお手元に届くまでを絵本にしたりと子供向けの仕組みも考え中。少しでも農業について、食について興味を持ってもらったり触れる時間を作っていけるように、土や野菜と向き合いながら日々考えています。大人に対しては、「パラレルノーカー」という副業・兼業として農家をする体制を受け入れられる方法を模索中。ビジネススキルのある農家は必要ですし、自然に囲まれて農作業することで自然の摂理や原理原則が仕事に活かせたり、少しいつもの場所から離れることでひらめきが生まれるのではと考えています。
むかわ町穂別で代々営まれてきた中澤農園さん。明治時代からの伝統と新しい挑戦で、美味しい農作物を栽培するのはもちろんのこと地域や農業の未来のためにも活動なさっていました。熱い想いを持った四代目中澤農園さんの商品をぜひ一度味わってみてください。