Fu’s room(札幌市)さんを訪問してきました。

ひとつひとつ模様が違ってみえたり。同じ色で染めているのに発色が違っていたり。だからこそ、選ぶ楽しさがある。

軽くてしっとりと手に馴染む柔らかさが特徴のサフォークレザー。羊のまち、士別市のサフォーク羊で道産羊革を開発し、その革を使って自分たちの手でひとつひとつポーチや財布などのレザーアイテムをハンドメイドで製作している「Fu’s room」さん。

札幌市南区・澄川にある店舗を訪ねると、笑顔がすてきな藤崎浩一(ふじさき こういち)さん、 玲奈(れな)さんご夫婦と、鮮やかでうつくしいサフォークレザーのがま口ポーチが迎えてくれました。

店主である藤崎さんは、もともとはまったく違う仕事をしていました。
「以前からから木工や羊毛・紡ぎなど、趣味でものづくりを楽しんでいました。失敗して穴があいても閉じれば味になる。自分で使うものだから好きな素材で自由に作ればいいのですから。

どんな仕上がりでも自分で考え作りだしたものには個性がでます。その個性にこそ愛着が湧き、何よりの宝物になると思うのです。だから“手作りに正解はない”が口癖になっています(笑)」

手仕事のおもしろさを広めたいと、2012年、札幌市に手芸資材店「Fu’s room」をオープンしました。

お店に来てくださったお客様から「北海道には革を扱うお店が少なくて」という声を聞くようになり、革の生産地である兵庫県のタンナーに赴き、オリジナル牛革の製作販売を開始。この牛革の開発をきっかけに少しずつ、手芸からレザークラフトを中心としたお店づくりになっていきました。

その頃から、「どうして北海道産の羊の革がないのだろう?」という疑問を抱きはじめました。

「エゾシカの革は道産レザーとして少しずつ確立されていましたし、ジンギスカンが有名な土地柄なのに羊の革が出まわらないのがずっと不思議でした。」

いつか羊の革を北海道の特産品にしたいという思いから、顔と手足が黒いサフォーク羊でまちおこしをしている士別市と、サフォーク羊の革の活用にチャレンジすることに。

「革になるまでも色々ありすぎて想像以上に大変でした(笑)」

「開発当初はタンナーから鞣し加工後の革が送られてくるたびにドキドキしていました(笑)革の手触り・色合いなどおなじ工程でつくっても個体差によって違いがでます。」

自分たち好みの革にするべくタンナーと試行錯誤を繰り返しましたが、なかなか安定して思い描く革が出来上がらない状態が続き、ハッと気付いたことがあるそうです。

「なぜ全て同じ様な革を作ろうとしているのか。その違いこそがその羊の個性なのだから、その個性を最大限にいかした革を作ろうと決めました。」

最初は資材店として始まったけれど、藤崎さんの思いはお店をはじめる前から変わらない。手仕事の魅力を広めたいという思いから、2年の時間をかけようやくサフォークレザーが完成しました。

現在のサフォークレザー製品はすべて手縫いで丁寧につくられています。メインにしているのは札幌スタイルで認証された「がま口 シリーズ」。

お客さまからの「中に生地があったらいいな」「化粧品を入れるから撥水生地だとうれしい」「大きいものと小さいものがほしい」「もう少し明るい色があるといいな」といったご意見を参考に改良を重ね製作しているそうです。

レモン、ピンク、ターコイズ…。見ているだけで元気になるようなカラーバリエーションとシンプルなデザインが女性のお客さまに人気です。

「この革はタンニン鞣(なめ)し加工で経年変化が楽しめるんです。お使いいただくうちに革の表面に光沢も出てくるんですよ。」

革製品は、その人その人の使い方で革の育ち具合が違うのも面白さのひとつ。

最後に、藤崎さんが大切にしていることをお聞きしました。

「はじめて兵庫県のタンナーのところに行った時、毛がついた状態の動物の皮が山積みになっている光景を目にし衝撃を受けました。現場に立ち動物の命をいただいているのだという自覚と感謝の気持ちが改めて湧き上がってきたんです。」

皮革事業は命を扱う商材だからこそ、ひとつひとつの革に無駄が出ないよう心掛けているそうです。動物の命と引き換えに頂いた貴重な資源を大切に使うという想いから、とても小さな端革でもアクセサリーに活用しています。

サフォークレザーは、一枚の中にも様々な表情がみえ、その違いが愛おしく感じているそうです。

「日々、羊と向き合い育てて下さる生産者の皆様、尽力を惜しまず革の加工をして下さるタンナーの皆様、皮から革に、そして革製品となった製品を応援して下さるお客様。私達の羊から始まるこのチャレンジは、その多くの方々の手を経由し、最後に生産者や羊を取り巻く環境などに還元することを目指した活動です。この一連の繋がりに感謝の気持ちを常に持ち、ものづくりに真摯に取り組んでまいります。まずはサフォークレザーを多くの方々に知って頂けたらうれしいです。」

ぜひ、お店に足を運んで手仕事ならではの魅力と、サフォークレザーの表情の違いを楽しんでいただきたいです。

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