おりなす(札幌市)さんを訪問してきました。

「おりなす」さんは北海道札幌市にある就労継続支援B型事業所です。様々な理由で働くことが難しい方の社会復帰や社会との接点を作ることを目的に設立されました。「おりなす」という名称は、『皆様の思いをひとつひとつ重ねあい、最高の仲間を最高な作品を、それぞれの幸せを大きな布のように織りなしていきたい』と考えて名付けられています。

就労継続支援B型事業所「おりなす」について

こちらは所長の伊藤和美さん。前職は医療法人で精神疾患を持つ方の看護師として13年勤めていました。そこで働く中で、「社会復帰を応援したい。」「社会との接点を持てる場所を提供したい。」と考えるようになり就労継続支援B型事業所開設。おりなすが最終地点ではなく、一般就労を目標に掲げています。実際に2020年は4名の方が一般就労されました。

「おりなす」では手作業の”ものづくり”をすることが出来ます。伊藤さんの長年の経験から、コツコツ続けられる作業を提供することで通所者さんの集中力が上がり、作業している間は病気であることを忘れられると感じていました。目に見えてスキルアップが分かると達成感を得られるため、自己効力感があがり自信の回復につながるうようサポートしています。その結果、病気の払拭につながり、気がついたら入院や通院の回数が減っているそうです。

一般就労を応援していますが、支え合いながら働ける場所でありたいとも伊藤さんは話していました。多種多様な生き方を認め、それぞれに合わせて働き方を提供しています。好きな日時に来ていい。好きな作業をしていい。短時間だけでも、時間をかけてゆっくり作業をしてもいい。全ての『働きたい』という気持ちに答えられるよう、柔軟に対応しています。そして、作業内容も好みのものや適性に合うものがなければ作りだそうという姿勢でいます。

また、せっかく作るのならば良いものを、多くの方に素敵だなと買ってもらえる商品を作るため、デザイナーさん・織りの先生・革作家さん・ミシンの先生などを招いています。通所者の皆さんが「おりなす」で初めてやる作業であってもスキルを身に付けられるように、分からないことは聞ける体制を整えるために専門職の先生にお願いするようにしています。

住友静恵さんは広報及びアクセサリーなどの作品制作から販売までトータルしてデザインを手掛けている先生です。通所者さんの世界観を最大限に活かして商品化することを目指しています。初めてやる作業だからこそ独創的な配色や形の組み合わせが生まれることが多く、先生でも気付きや学びがあるそうです。

「おりなす」事業所内の様子

事業所内では皮革を使用した商品を作っている方、マスク製作をする方、アクセサリーを作る方、手織りをする方、刺繍を施す方、、、取材に訪問した時には10名ほどの通所者さんがそれぞれの”ものづくり”をされていました。20代から70代まで幅広い年齢の方が通われています。どなたが先生で、どなたが通所者さんか分からないほど楽しそうに明るく作業しているのが印象的でした。

こちらは手織りのバックや小物を制作する工程の一つである、「裂き織り(さきおり)」をしている様子です。裂き織りは着物などを細く裂いて再び織り上げた江戸時代から伝わる織物のこと。本当に時間のかかる作業だそうで、1日で20cm程しか織れないんだとか。技術を身につけるのにも時間がかかり、作業している男性は7年かかったそうですよ。

着物は「母親や祖母が使用していた思い出の着物が何かの役立つのであれば。」「素敵な作品に生まれ変わってくれるなら是非。」と使われなくなったものを寄付していただいています。

織りあがった生地がこちら。絹や綿は、化学繊維にはない温かな風合いに仕上がります。そこへ刺繍を施しています。出来上がるまでに着物を解き、洗い、染め、織り、刺繍と沢山の工程があります。通所者さんが作業分担しているので、沢山の人が携わっています。

裂き織り生地を使用して出来上がった商品がこちらになります。多くの時間とたくさんの職人が手掛けて出来上がったバッグ。裂き織りという技法で再び「おりなす」に通所する方々によって紡がれています。全てが手作業なので、『一点もの』との素敵な出会いになることでしょう。

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